ジェニー、新曲『Fallen Angel』MV撮影の舞台裏を公開
写真: Gavy N.J — Explicit / CC BY-SA 4.0BLACKPINKのメンバーでソロ歌手としても活動するジェニーが8月28日、自身のSNSで新曲『Fallen Angel』のミュージックビデオ撮影の舞台裏を公開した。ワイヤーで逆さに吊るされる場面や、水槽の中での撮影といった負担の大きいカットに取り組む姿が収められており、これまで見せてきた洗練されたイメージとは異なる大胆なコンセプトが示された。同日には同名のデジタルEP『Fallen Angel』も発表されている。
ジェニーが投稿したのは「『Fallen Angel』のミュージックビデオが出た。今すぐ見てほしい」というメッセージと、撮影現場を写した写真と映像だ。公開されたコンテンツには、デジタルEPのタイトル曲となるミュージックビデオの制作過程と、そこで用いられた多様なコンセプトが記録されていた。単なる完成映像の告知ではなく、どのように作られたのかという工程そのものをファンに向けて開いてみせた形になる。

もっとも注目を集めたのは、ジェニーがワイヤーで逆さに吊るされ、強い風を受けながら空から墜ちていく天使を表現した場面だ。天使といえば翼であり、上昇のイメージがつきまとうが、この演出はそれを反転させ、墜落と堕落を正面に押し出している。作品のタイトルである『Fallen Angel』、すなわち「堕ちた天使」という言葉が含む物語を、映像として具体化した場面だと受け止められている。逆さ吊りに強風という条件が重なる撮影は身体的な負担が小さくないが、ジェニーはそれを引き受けたうえで一枚の絵を成立させている。
一方で、現場でのジェニーには余裕を感じさせる表情もあった。撮影の合間の休憩中には、翼をはためかせるような身ぶりをしてみせたり、いたずらっぽい表情を浮かべたりと、本人特有の明るいエネルギーがのぞく。緊張感のある本番のカットと、その合間の軽やかな姿の落差が、舞台裏映像ならではの見どころになっている。またカメラが下からジェニーを見上げるアングルでは、はっきりとした目鼻立ちと強いまなざしが際立ち、天上と地上の境界に立っているかのような印象を残した。
スタイリングもまた、アルバムが抱える二重の情緒を強調するものだった。強烈なレッドのスリーブレスワンピースを着た場面では、直角に落ちる肩のラインと堂々とした表情によって、官能的でありながら攻撃的でもある空気がつくり出されている。さらに新しく披露したショートヘアが、古典的でありながら神秘的なイメージを加えた。ひとりの人物が天使と堕ちた存在のあいだを、純粋と欲望のあいだを行き来しているかのような視覚的な変奏が、映像のなかで続いていく。衣装、髪型、表情、そしてカメラの角度という要素が、それぞれ別の方向から同じ主題を照らしている構成だと言える。
水と氷を使った撮影も目を引いた。ジェニーは腰まで水が満ちた水槽の中に入って撮影を行い、氷の中には母親が毎年プレゼントしてくれるという青いバラが配置された。青いバラは一般に、現実にはたやすく存在しない理想や神秘、叶えることが難しい愛などを象徴する素材として使われてきたものだ。今回のミュージックビデオでは、そうした一般的な象徴性に、ジェニー個人の記憶が重ねられている。つまり作品の世界観を支える装置であると同時に、彼女自身の私的なエピソードが差し込まれた要素にもなっているわけだ。ファンにとっては、映像の細部にアーティスト本人の生活の一片が埋め込まれていることを知る手がかりになる。
こうした演出は、ジェニーがソロ活動を通じて進めてきたイメージの拡張とも地続きにある。BLACKPINKとしての活動で大衆的なスターとしての位置を築く一方、ソロの仕事においては、音楽だけでなくファッション、映像、パフォーマンスをひとつの統合された美学として構成してきた。『Fallen Angel』もまた、単に音源を公開することにとどまらず、色彩や衣装、空間、身体の動きを用いてひとつの視覚的な世界観を組み立てることに焦点を合わせている。逆さ吊りも、水槽も、氷の中の青いバラも、その世界観を構成する部品として位置づけられている。
ファンからは、公開された舞台裏映像に対して「私の天使はジェニー」「今回のミュージックビデオは本当にすごい」「青いバラまで意味が特別だ」といった反応が寄せられ、好意的に受け止められている。
作品の構成についても整理しておきたい。『Fallen Angel』はこの日、デジタルEPの形で公開された。フィジカルEPには、デジタル版に収録されている『FALLEN ANGEL』『HEAVEN』『Less than a Lover』に加えて、『sweettooth』『lockitdown』『Face』の3曲が追加され、全6曲で構成される。追加収録曲はフィジカル盤でのみ聴くことができる曲であり、ジェニー本人が直接選んだと伝えられている。デジタルとフィジカルで収録内容に差を設ける手法は韓国の音楽市場では珍しくないが、追加曲の選定にアーティスト本人が関わっている点は、この作品を一貫した意図のもとにまとめようとする姿勢の表れとも読める。
ジェニーをめぐっては、今回のリリースに先立つ動きも報じられていた。所属事務所であるOAエンターテインメントは8月19日、オンラインコミュニティやSNSを中心に広がっているステージ映像の悪意ある編集・拡散行為に対し、法的手続きに着手したことを明らかにしている。事務所は公式の立場表明のなかで「いかなる示談も寛大な処置も行わない」と述べ、民事・刑事の両面で対応を進める方針を示した。事務所が問題視しているのは単発の書き込みではなく、継続的に確認されているという一連の行為で、アーティストに対する根拠のない誹謗中傷や虚偽事実の流布、写真および映像に関わる問題を挙げている。新作の公開はその約10日後にあたる。
音楽とファッション、映像美をひとつの物語として編み上げるジェニーのソロ活動が本格化するなかで、『Fallen Angel』が彼女のこれまで築いてきたアーティストとしてのイメージにどのような変化をもたらすのかにも関心が集まっている。天使という誰もが知る象徴を、上昇ではなく墜落の側から描き直した今回の試みは、洗練という言葉で語られてきた従来の像に別の輪郭を与えるものになりそうだ。日本の読者にとっても、デジタルEPは各種音楽配信サービスで、ミュージックビデオはジェニーの公開したコンテンツを通じて触れることができる。舞台裏映像とあわせて見ることで、一つひとつのカットにどんな意図が込められていたのかを追いかける楽しみ方もできるだろう。






