ホン・サンス新作、ロカルノで3冠 キム・ミニが2度目の演技賞
写真: キム・ミニ — ManoSolo13241324 / CC BY-SA 4.0韓国のホン・サンス監督の新作『目のやり場がない』が、スイスで開かれた第79回ロカルノ国際映画祭で監督賞、最優秀演技賞、エキュメニカル審査員賞の3部門を受賞した。現地時間15日に行われた授賞式で、主演のキム・ミニが最優秀演技賞に選ばれ、ホン監督が監督賞を受け取った。キム・ミニにとっては2024年の第77回映画祭に続く、同映画祭2度目の演技賞受賞となる。
ロカルノ国際映画祭の演技賞は、男優・女優と性別を分けずに贈られるのが特徴だ。今回キム・ミニとともに受賞者として名前が並んだのは、ジョバンニ・トルトリチ監督の『ケティチェ』に出演したモニカ・ベルッチだった。映画祭の最高賞にあたる金豹賞は、ルーマニアのフロリン・シェルバン監督による『君はここの人じゃない』が獲得している。
受賞作『目のやり場がない』は上映時間72分の作品で、今年のロカルノでは国際コンペティション部門に招待されていた。10年前を最後に会えずにいた母と再会するため、済州島を訪れる娘の物語を描く。キム・ミニが演じたのは、その娘サンヒ役。共演にはチェ・ミョンギル、クォン・ヘヒョ、シン・ソクホ、パク・ミソが名を連ねる。ホン・サンス監督にとってこの作品は35本目の長編であり、ロカルノ国際映画祭への公式招待は5度目にあたる。長年にわたり同映画祭と関係を築いてきた監督が、その5度目の招待で監督賞を手にした形だ。
授賞式の舞台に立ったキム・ミニは、ホン監督への感謝を口にしたうえで、ともに現場をつくった同僚たちの名前を一人ずつ挙げていった。赤ん坊と一緒にいる同僚について語ったところでは、一瞬感情がこみ上げる様子も見せたという。そして最後に「これからは本当に愛する心だけを持って演技していきます」と語った。出産を経て再びカメラの前に立った俳優が、復帰後初めて手にした国際映画祭のトロフィーを前に口にした、短い決意表明だった。
この作品は、キム・ミニにとって出産後初めての撮影作でもある。本紙が8月14日に報じた通り、キム・ミニがロカルノの記者会見に姿を見せたのは、ホン監督との間に生まれた子どもの出産以降、初めての公の場だった。約1年ぶりとなるその席で、本人は出産後およそ2年ほど休んでから撮った初めての映画だと説明している。撮影現場では授乳と離乳食の準備を並行しながらの日々で、「以前のように映画だけに没頭する姿は消えた」と率直に語った。まず子どものための準備を終えてから撮影の準備に入るという順番になり、生活の重心そのものが変わったことを自身の言葉で認めた。ただ、その変化はマイナスにばかり働いたわけではなく、むしろ作品の中のサンヒという人物に自然としみ込んでいったと本人は話している。
韓国メディアは、記者会見の日と授賞式の日でキム・ミニの見せた表情の違いにも注目した。14日の公式Q&Aでは、染めていない髪と最小限のメイクという自然な装いで観客の前に立った。出産後初めての公式の場ということもあり、その日の関心はスタイルよりも、久しぶりに観客の前に立ったキム・ミニという存在そのものに集まっていた。翌15日の授賞式では一転して、黒のノースリーブドレスにシルバーのアクセサリーとフラワーの装飾を合わせ、髪は自然に結い、目元と唇に色をのせた。俳優キム・ミニとしてなじみのある、整えられた雰囲気が戻ってきたことに、オンライン上では映画『お嬢さん』で演じた秀子の頃を思い起こすという反応も出た。もっとも、その日の中心にあったのは外見ではなく演技であり、変わったのはメイクだけではなかった。出産後初めて撮った映画、久しぶりの公式の場、そして2度目のロカルノ演技賞という並びこそが、俳優としての復帰を最もはっきり示していた。
キム・ミニにとってロカルノは、初めての舞台ではない。2024年の第77回映画祭では、同じくホン・サンス監督の『水流のなかで』で最優秀演技賞を受賞している。それから2年、出産と空白期間を経て同じ映画祭に戻り、再び演技賞を手にしたことで、この映画祭との縁はいっそう深いものになった。しかも今回は本人一人の受賞にとどまらず、監督賞とエキュメニカル審査員賞を含めて作品全体が3冠を記録した。エキュメニカル審査員賞は、映画祭に設けられた独立した審査団が贈るもので、コンペティション部門の主要賞とは別の観点から作品を評価するものだ。
日本の読者にとってロカルノ国際映画祭は、カンヌやベルリン、ベネチアほど日常的に名前を聞く機会は多くないかもしれない。だが、作家性の強い作品を積極的に迎え入れる映画祭として知られ、ホン・サンス監督が繰り返し招かれてきたのもその性格と無縁ではない。今回で5度目の公式招待、そして35本目の長編という数字は、寡作の作家ではなく、一定のペースで作品を撮り続けながら国際的な評価を保ち続けてきた監督像を示している。演技賞を性別で分けない同映画祭の方式も、日本ではまだ一般的とは言えない形式であり、モニカ・ベルッチと並んでキム・ミニの名前が挙がったという事実は、その仕組みを端的に伝えている。
『目のやり場がない』は、10年ぶりの母娘の再会という題材を、済州島を舞台に72分という短さでまとめた作品だ。長尺の大作が並ぶ国際コンペティションの中で、この上映時間はホン監督らしい選択とも言える。チェ・ミョンギル、クォン・ヘヒョといったホン作品でおなじみの顔ぶれに、シン・ソクホ、パク・ミソが加わった布陣で、キム・ミニ演じるサンヒの旅を描く。日本での公開や配信に関する情報は現時点で伝えられていないが、ロカルノでの3冠という結果が今後の展開にどう作用するかは注目される。
キム・ミニ自身の言葉を借りれば、今回の受賞は「これからは本当に愛する心だけを持って演技していきます」という一言に集約される。出産による約2年の休止を経て、生活の優先順位が変わったことを隠さずに語ったうえで、その変化ごと演技に持ち込んだ結果が国際映画祭での評価につながった。8月14日の記者会見から15日の授賞式までのわずか一日の間に、久しぶりに公の場に戻った俳優が、そのまま2度目のトロフィーを手にする。ロカルノでのこの二日間は、キム・ミニという俳優の復帰を示す区切りとして記録されることになった。






