グラミー新設のアジア部門、BTSに続き韓国大手事務所も出品見送り
写真: BTS — Samsung Saudi Arabia / CC BY 3.02027年の第69回グラミー賞で新しく設けられる「ベスト・アジアン・ポップ・ミュージック・パフォーマンス」部門をめぐり、BTS(防弾少年団)が始めた出品拒否が韓国の大手芸能事務所にも広がっている。韓国の通信社ニュースピム(Newspim)が10月26日に報じた。グラミー賞を分析するサイト「The Grammy Guru」が10月15日に伝えたところによると、BTSの所属事務所HYBEのほか、SM、JYP、YGを合わせた韓国の4大事務所は、この部門に1曲も出品しなかった。今年大きな人気を集めたJENNIE(ジェニー)とATEEZも、この部門には楽曲を出していない。
この部門は、グラミー賞を主催するアメリカのレコーディング・アカデミーが新設したものだ。韓国のK-POP、日本のJ-POP、中国のC-POPなど、アジアの市場で生まれた、あるいはアジアで広く親しまれている大衆音楽の芸術的な成果に光を当てることを目的としている。朝鮮日報は、グラミー賞が「アジアン・ポップ」部門を設けたのは70年の歴史で初めてだと伝えている。J-POPも対象に含まれるため、日本の音楽ファンにとっても無関係な話ではない。

議論の的になっているのは、出品の条件だ。アカデミーの規定では、この部門に出品する曲は、ひとつ以上のアジアの言語を「意味のある形で」使っていなければならない。アジアの言語が曲の個性を示すほど大きな役割を果たしていることが求められ、いくつかの単語や短いフレーズが入っている程度では、条件を満たすと認められるのは難しい。英語だけで歌った曲は対象外となる。
この条件には二つの面から批判が出ている。ひとつは、K-POPの実情に合っていないという指摘だ。K-POPは英語と韓国語を混ぜたり、英語詞の割合を増やしたりして世界市場に挑んできた。この条件では、そうした音楽の流れを十分にくみ取れないという。もうひとつは、音楽の伝統も産業の成り立ちも違う複数の国の音楽を「アジアン・ポップ」という一つの枠にまとめてよいのかという疑問だ。
議論の中心にいるのがBTSである。BTSが今年3月に出した5枚目のフルアルバム『ARIRANG』は、タイトル曲「SWIM」をはじめ多くの曲が英語詞で歌われている。そのため、BTSはそもそも新しい部門の出品条件を満たせない。BTSはこれまでグラミー賞に挑み、本賞の受賞を目指してきた。しかし、新部門が設けられると、すぐにグラミー賞への出品を見送る考えを示した。7月にはメンバー全員がそれぞれのSNSで「音楽が地域や言語で分けられるのではなく、音楽そのものとして聴かれ、愛されてほしい」と伝え、出品しない意思を表明している。
BTSの決断は海外でも反響を呼んだ。多くの海外メディアがこの件を大きく扱い、グラミー賞の基準をめぐる議論を取り上げた。アニメーション映画『KPop Demon Hunters(ケーポップ・デーモン・ハンターズ)』のマギー・カン監督も、BTSの決断を支持すると公に表明した。批評家からも新部門への懸念が相次いだ。アメリカの雑誌『ティーン・ヴォーグ』の文化コラムニスト、アヤン・アルタン氏はコラムで、今回の措置は白人以外のアーティストを主要部門から切り離してきたグラミー賞の慣行を繰り返すおそれがあると指摘した。
批判が強まると、レコーディング・アカデミーは一度、新設部門を見直す考えを示した。しかし10月になって、部門を維持する方針を最終的に決めた。そして10月15日のThe Grammy Guruの報道によって、出品しなかったのはBTSだけではないことが明らかになった。当サイトでも10月16日にこの件を伝えている。その時点の報道では、世界的な人気を持つBLACKPINK、TWICE、Stray Kidsの名前もこの部門の出品者には見当たらなかった。韓国ではMoney Todayが16日に報じたほか、朝鮮日報も20日の会員向けニュースレター「グッドモーニング・メンバーシップ」でこの問題を取り上げた。
韓国の音楽業界は、事務所の判断をどう見ているのか。ニュースピムの取材に応じた関係者の一人は、K-POPは「アーティストとファンが一緒に育ててきた分野」だという点を、多くの関係者が考えた結果だと話した。さらに、K-POPの成長を支えてきたファンの自負や、K-POPがいま持っている存在感を踏まえ、受賞が予想されていたグループが先を見すえ、ファンの気持ちに寄り添う選択をしたと受け止めていると語った。
別の関係者は、受賞への期待という面から説明した。毎年のグラミー賞授賞式では、K-POPアーティストが受賞するかどうかに韓国内外の注目が集まってきた。しかしK-POP関連の曲では、Netflixのアニメーション映画『KPop Demon Hunters』のOST「Golden」を除いて受賞はなかったという。この関係者は、今年はBTSがカムバックしてアメリカでも好成績を収め、JENNIEやATEEZなど活躍したアーティストも多かったと指摘した。そのうえで「もしグラミーが新しい部門をつくっていなければ、来年こそK-POPが受賞するのではという期待が必ず出ていたはずだ」と述べ、「アジアン・ポップ部門の新設は、K-POPアーティストが本賞を受賞する芽を摘んだ」と強調した。
BTSはこの議論が続くなかでも、精力的に活動している。『ARIRANG』を掲げたワールドツアー「BTS WORLD TOUR 'ARIRANG'」は中南米に入り、コロンビアの首都ボゴタでの公演に続いて、現地時間の10月21日にはアルゼンチンで初の単独公演を開いた。会場はラプラタのエスタディオ・ウニコ・ディエゴ・アルマンド・マラドーナ。デビューから13年で初めてアルゼンチンのステージに立ったBTSを、強い風と雨のなか、中南米各地から集まったファンが迎えた。メンバーのRMについては、彼が集めた美術品をサンフランシスコ近代美術館(SFMOMA)で公開する展覧会も話題になっている。グラミー賞の新部門に出品できない理由となった英語詞中心のアルバムは、こうして世界各地のファンに届けられている。
ニュースピムは、今回の新部門がこれまで目を向けられにくかったアジアの音楽に光を当てる試みである可能性も認めている。それでも、音楽を言語や国で分けるのは適切ではないという意見が大勢を占めていると伝えた。世界的に成長したK-POPをどのような形で評価すべきか、曲の言語や出身地域を受賞資格の基準にすることがどこまで妥当なのか。こうした議論は今後も続く見通しだ。第69回グラミー賞の授賞式は2027年2月に予定されている。
原文:[핌 포커스] BTS로 시작된 그래미 보이콧…SM·YG·JYP로 퍼졌다










